お迎えの帰り際、先生に「少しお時間よろしいですか」と呼び止められる。「〇〇くん、集団行動のときに少し気になるところがあって……」――そう切り出された瞬間、頭が真っ白になった、という話を、子どもの発達相談の場でよく耳にします。「うちの子に限って」という気持ちと、「やっぱりそうだったか」という気持ちが同時に押し寄せて、その日の帰り道の記憶がほとんどない、という親御さんも少なくありません。今日は、そんな「指摘された日」に、まず何を考え、何をすればいいのかを、作業療法士としての現場経験も交えてお伝えします。
ショックを受けるのは、自然な反応です
先生からの指摘を聞いて、否定したくなったり、逆に必要以上に自分を責めてしまったりするのは、決しておかしなことではありません。むしろ、それだけ我が子のことを真剣に考えている証拠だと思います。大切なのは、そのショックを一人で抱え込まず、次の一歩につなげることです。焦って結論を出す必要はありません。まずは「教えてくれてありがとうございます」と、先生の気づきを受け止めるところから始めれば十分です。
「グレーゾーン」という言葉の本当の意味
グレーゾーンとは、発達障害の診断基準を完全には満たさないものの、似たような特性や困りごとが見られる状態を指します。診断名がつくかどうかよりも大事なのは、「今、その子が生活の中で何に困っているか」を具体的に見ていくことです。実際、診断の有無にかかわらず、児童発達支援などの公的な支援サービスは利用できるケースが多くあります。この事実を知らないまま、「診断がないから支援は受けられない」と思い込み、家庭だけで抱え込んでしまう保護者の方を、現場で何度も見てきました。
現場で見た、あるご家族のエピソード
以前関わらせていただいたご家庭では、園から「着席が難しい」と指摘され、お母様がひどく落ち込んでいらっしゃいました。しかし勇気を出して自治体の発達相談窓口に連絡したところ、作業療法士による観察の結果、椅子の高さが合っておらず足が床につかないために姿勢を保ちにくいことが分かりました。椅子の下に台を置いて足元を安定させただけで、着席時間が大きく変わったのです。「発達の特性」だと思っていたことの中に、実は環境を整えるだけで解決できる部分が含まれていることも、決して珍しくありません。
最初にすべき3つのこと
一つ目は、園の先生に具体的な場面を聞くことです。「気になる」だけでなく、「どんな場面で」「どのくらいの頻度で」困っているのかを教えてもらうと、次に相談する専門職にも伝えやすくなります。二つ目は、自治体の発達相談窓口や保健センターに連絡してみることです。診断を受けに行くのではなく、「相談してみる」という軽い気持ちで十分です。三つ目は、家庭の中で「困りごと」を一つに絞って様子を見ることです。すべてを一気に解決しようとせず、今いちばん困っている場面から手をつけていきましょう。
一人で決めなくていい
グレーゾーンの子育ては、正解が一つに定まらないことがほとんどです。だからこそ、園の先生、発達相談の専門職、作業療法士や保育士など、複数の視点を借りることが助けになります。「うちの子だけおかしいのでは」と孤立しないでください。同じような戸惑いを抱える家庭は、思っている以上にたくさんあります。
この記事で紹介しきれなかった「園や学校との連携の具体的な伝え方」「発達相談窓口に行く前に準備しておきたいこと」については、noteでより詳しく解説しています。よろしければそちらもあわせてご覧ください。

