在宅介護を続けている中で、「そろそろ老人ホームも考えたほうがいいのだろうか」とふと思う瞬間があったという声は少なくないと言われています。同時に、「まだ本人を見捨てるようなことをしたくない」「自分が頑張れば続けられるのではないか」という気持ちも同居しやすく、この二つの間で揺れ動くこと自体は、決して特別なことではないと考えられます。
老人ホームを考え始める「きっかけ」によくあるパターン
老人ホームを考え始めるきっかけには、いくつかの共通したパターンがあると言われています。本人の心身の状態が変化し、これまでの介助では対応が難しくなってきたと感じるとき。介護している側の体調やまとまった睡眠が取れない状態が続いているとき。仕事や自分の生活との両立が難しくなってきたと感じるとき。転倒や誤嚥など、安全面でのヒヤリとする出来事が増えてきたときなどです。どれか一つが当てはまるからといって、すぐに施設利用を決めなければならないわけではなく、あくまで「検討を始めるきっかけ」として捉えていただければと思います。
決断の前に整理しておきたい5つの視点
決断の前に整理しておきたい視点として、次の5つが挙げられます。1つ目は本人の心身の状態の変化、2つ目は介護している側の心身の負担、3つ目は仕事や家庭生活との両立の状況、4つ目は経済的な見通し、5つ目は本人自身の意思をどこまで確認できているか、です。これらは「今すぐ決める」ためのチェックリストというより、現在の状況を家族自身が客観的に眺めるための視点として使っていただくものです。どの視点を重く見るかは家庭によって異なり、一律の正解があるわけではないと考えられます。また、本人の身体状況や要介護度によって、どの視点を優先すべきかは変わってくるため、5つすべてに明確な答えが出せなくても、無理に埋めようとしなくて大丈夫です。
家族間で意見が分かれたときの向き合い方
家族間で意見が分かれることも珍しくありません。同居して介護をしている人と、離れて暮らす家族とでは、見えている負担の大きさが異なるため、意見の違いが生まれやすいと言われています。どちらかが正しく、どちらかが間違っているというものではなく、それぞれが違う立場から本人を思っているという前提に立って話し合うことが、対立を和らげる一つの糸口になると考えられます。ケアマネジャーや地域包括支援センターに同席してもらい、第三者を交えて話し合う方法も選択肢の一つです。
老人ホームを検討することは、本人を見捨てることでも、介護に失敗したことでもありません。在宅での介護を続けるか、施設の力を借りるかは、本人と家族にとってより良い生活を続けるための選択の一つであり、どちらを選んでも「正解」も「不正解」もないと考えられます。迷ったときは一人で抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら、本人と家族に合う形を探っていただければと思います。
まとめ:決めるための「正解」はなく、相談しながら選んでいい
老人ホームを考え始めるきっかけには共通したパターンがあり、本人の状態・介護者の負担・生活との両立・経済面・本人の意思という5つの視点で状況を整理することができます。家族間で意見が分かれるのも自然なことであり、ケアマネジャーなど第三者を交えて、一人で抱え込まずに検討を進めていただければと思います。
※本記事は一般的な情報の紹介であり、特定のご家庭にとっての正解を示すものではありません。施設利用のタイミングや方法についての個別のご判断は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、医療機関などの専門職にご相談ください。

